平成元年
平成元年のころがどんな時代だったかを想い出したくて、これ(「東京バブルの正体」昼間たかし著)を読んでみた:
平成元年(1989年)はバブルのただなかにあった。バブル時代というと、皆お金に浮かれていて就職は超売り手市場で(というか就職しないでフリーターでも稼げてむしろ時代の波に乗っている感すらあった)、大きくいうと経済的には発展したが精神的には不毛な時代という振り返り方がされがちかもしれない。
だが当時の時代精神はそれだけではない。この本を読んで大事だと思ったのは自由さと希望。
将来がさらに右肩上がりになると信じていたので当然希望はある。「バブル経済」という呼び名もバブル崩壊後につけられたので、当然のこと当時はバブルであるという認識はない。まだどんどん経済は右肩上がりに発展していくものだと思っていた。
平成元年ごろ。まだ会社の会議では公然とみな煙草を吸っていた。ヨーロッパに行くにもアンカレッジ経由だった。ドイツは東西に分断されていた。携帯電話はまだショルダー型だった。そして皆「将来はさらに良くなる」と単純に信じ、根拠なく希望だけは持っていた。
不幸を治す薬は希望よりほかにない。The miserable have no other medicine but only hope.(William Shakespeare “Measure for Measure”)
この国には何でもある。だが、希望だけがない(村上龍「希望の国のエクソダス」)